2025年個展 -Persople-:私の作品は、「自己と他者」、そしてそれぞれが持つ「日常」を主なテーマとしています。 制作の出発点となるのは、日々の中でふと浮かぶ小さな違和感や疑問です。そうした問いを辿っていくと、私はいつも「正しさとは何か?」という根本的なテーマに行き着きます。 例えば、韓国の反日感情について調べていた時、日本と韓国で教えられている歴史に、誇張や省略、矛盾があることに気づきました。その時、自分が信じていた価値観や教育の内容も、実は地域や時代によってつくられた、ある一面の情報に過ぎなかったのではないか、と考えるようになりました。 この経験を通して、私は何かをすぐに「正しい」「間違っている」と判断するのではなく、一度立ち止まって問い続けることに意味があるのだと感じるようになりました。それは、自分自身と向き合い、他者との関係を見直すための大切なプロセスでもあります。 だからこそ私は、作品を通して「自己と他者」の間にある目に見えない壁やすれ違い、違和感と向き合いたいと考えています。そして、私の作品が観る人にとっても、思い込みや「当たり前」と思っていた前提に気づき、それを見つめ直すきっかけになればと願っています。
Artist statement:今回は〈Persople〉という連作を主軸に、作品を展開したいと考えています。「Persople」とは造語で、英語の「Person (一人の人)」、「People(複数の人)」を組み合わせた単語です。 この作品は、私たちがどれだけ他人を「一人の人間」として見ているかをコンセプトに描きました。 時に人は、目の前にいる人をその背景や立場、社会的なラベルで判断してしまうことがあると思います。例えば、「外国人だから」「男性だから」といった枠組みで、その人を全部理解した気になってしまう。そうやって、あるレッテルを通し、ひとかたまりにして他人を評価することは楽ではあると思います。 しかし、私たち一人一人が持っているのは、他の誰とも違う、自分だけの人生です。 この作品では、ある1人の女性の日常の一部を描いていますが、彼女がそうであるように、人の思いや背景など、外からは見えない部分がたくさんあります。 それでも、相手を少しでも知るためには、固定観念を超えて、その人自身の人生を尊重し、感じ取ることが大事だと考えています。 この作品は、他人を見つめる際、性別や国籍、社会的な立場よりも前に、一つの人生を持った一人の人間であるということを再確認するきっかけにしたいと思いながら、制作しました。 そんな小さな気づきが、もっと深く他者と繋げるのではないだろうかと考えています。 (村瀬 ひより)
2024年個展 -kara-:私にとって「非日常」であることが、「日常」の人がいる。その反対に、私にとって「日常」であることが、「非日常」の人もいる。 私が思う非日常は、戦争、災害、殺人、暴力などであるが、それらと共に生きている人がこの世界のどこかに必ずいる。想像もできないような非現実的な光景が、間違いなく現実に存在するのだ。 私(私たち)には生活があり、それだけで精一杯で、外部で起こっていることに無関心になることも多々あるが、決して無関係ではないはずだ。 そういった当事者と当事者ではない人々の間にあるもの、例えば情報や理解の壁について考えてながら、作品をつくっていきたい。
Artist statement :「可愛い」は安っぽい感じがする言葉で、作品のテーマに含めたくありませんでした。 しかし、そんなチープな言葉である「可愛い」に大きく囚われていると気がついたのは、今回展示に向けて新しい作品を制作していた時でした。 元々は、大量生産・消費だったり、誰かにとって大事なものが、他人の手によって軽くあしらわれるというテーマのつもりで、新作を描いていましたが、作品を描いていく中で「可愛い」、「素敵」、「かっこいい」などといった美的な感情が根本にあると思い、途中でテーマや考え方に変化が起こりました。 正解はないけど、どこか基準がある人や物の美しさ、移り変わりゆく流行、その中にある喜び、悲しさ、空しさ、喜び…の循環を表現しました。 また、今回展示する作品は全て美に関するテーマはありませんが、新作含め共通して「心の穴」が表現されています。 観ることによって、その穴が埋められるような作品ではありませんが、他者、そして私自身も少しでもそれと向き合えるような時間がつくれたらいいと考えております。(村瀬 ひより)
■略歴
2000年 名古屋市生まれ
2024年 名古屋芸術大学芸術学部芸術学科美術領域洋画コース 卒業
(2022年 10月から2023年9月 ブレーメン芸術大学 交換留学)
2024年 4月より 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画版画領域 入学
■個展
2021年 あの人が退屈な話をしてくる(名古屋芸術大学HEIGEN)
2024年 村瀬ひより展 -kara-(GALLERY IDF・名古屋)
2025年 村瀬ひより展 -Persople-(GALLERY IDF・名古屋)
■グループ展
2021年 「My First Collection」名古屋市民ギャラリー矢田
「Gate Art Competition」ビジュアルギャラリー
2023年 「Synergise Me」 ドイツ Hochschule für Künste Bremen GALERIE FLUT
「CROSS OVER Vol. 43」香港 LO GALLERY
「徳川十二新匠」岡崎市桜城橋 (プロジェクションマッピングのデザイン担当)
「徳川十二新匠 美術展」岡崎市美術館




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